酒器というのは、日常と非日常の境界に位置するするようなうつわです。作り手それぞれのラインナップのなかでは手にとりやすいものなので、皆取り組みます。小さな酒器でも、それぞれの思いが強く込められているもので、そこから何かを感じていただいて、世界を広げていってもらうきっかけにしたいのです。
展示期間も半ばになろうとする先日、カラニスに行って参りました。通常のギャラリー展示では、総勢25名にもなる企画は珍しいのですが、流石専門ギャラリーの腕前、絶妙のまとまりでした。そして今回は、酒蔵の協賛により、珍しいお酒を試飲できますので、尚更作品選びを楽しめる環境が整えられました。

参加者として見たこの展示は、現在一線の作り手たちの作品のなかにおかれる自分の作品が、どうなるかという興味に尽きます。日頃、横の付き合いがそれほど多くない私でも、半分以上は知り合いの作家達、懐かしさと心地よさもありましたが、彼等の力作に自作を透かしてみたときの緊張感は並々ならぬものがありました。企画段階のセレクションの賜物でもあるのですが、皆の中にある自作品は、浮かびこそしないものの、沈みもせず、かぶりもせず、なにかの世界がひとつできているかなという感覚も得ました。
手も、飲み込みも、鈍い私ですが、ガラスに専らとなって二十年余、今までの道のりはまあまあのことだったのかもしれません。またその一方で、もう少し前に出ないといけないかなと感じた次第です。
展示は、後半に突入します。後半は、ギャラリーが培う長年の交流から、生け花や香水の発表も予定されています。ますます五感に触れる楽しい展示となりますので、どうぞお出かけ下さい。

「春の光を呑みましょう、ガラスの酒器展」

1/12金曜日から27土曜日まで
グラスギャラリー・カラニス
〒107-0062 東京都港区南青山5-3-10 FROM-1st 2F
TEL/FAX 03-3406-1440